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(歯科ブログ)天然歯の力

2017. 3. 31.

練馬区大泉学園の歯科・歯医者 山中歯科の山中大輔です。

 

今日で3月が終わりました。明日から新たな環境で生活する方も多いと思います。

忙しくなるシーズンですが、皆さまお体ご自愛くださいませ(私は鼻風邪をこじらせていますが)。

 

約3週間前のことですが、以前から通院してくださっている患者さんから緊急の連絡が入りました。

「ぶつかって歯が欠けてしまったので診てほしい」という内容。

 

こちらに来るまで約1時間かかるとのことでしたが、応急的な処置でもしましょうと説明してきてもらう事にしました。

 

下の写真はその方の通常時のものです。歯肉退縮などが認められますが、歯牙に動揺などはありませんでした。

 

歯牙脱臼1

 

ところが、来院時には、

 

歯牙脱臼2

かなりの衝撃でぶつかったのだと推測されましたが、前歯が1本抜け落ちてしまっています。

また隣の歯は、歯槽骨内で脱臼してしまいぐらぐらの状態です。一部歯槽骨の骨折も認められました。

 

抜け落ちた歯も、約1時間、乾燥した状態のまま、周囲には汚れも付着していました。

 

歯牙脱臼3

 

生理食塩水で綺麗に洗浄し、保湿した状態にしましたが、脱臼し抜け落ちてからの経過時間、歯牙の状態、患者さんの年齢などを考慮すると、かなり難しい状態です。

 

しかし、この前歯が欠損すれば、弱っている隣の歯の寿命も間違いなく短くなりますし、インプラント・ブリッジ・入れ歯、どの選択歯もデメリットが大きいと考えられました。

 

悩んだ結果、成功する保証はなく将来的には抜歯になる可能性を説明した上で、「歯牙の再植」をする事にしました。

抜け落ちた歯を洗浄し、元あった場所に戻します。

脱臼している歯と骨折している歯槽骨も、麻酔下で圧接しながら元の場所まで押し戻していきます。

その後、周囲の歯と固定をして終了。

 

歯牙再植

 

再植後約2週間後の写真になります。下はレントゲン写真になります。

 

歯牙再植

 

受け落ちた歯を再植した周囲の歯肉に炎症はなく、歯周ポケットも正常の範囲でした。

むしろ、隣の脱臼した歯を押し戻した方が、炎症が残る状態です。

 

しかし、どちらの歯も私が考えていた以上に、治癒傾向を示していました。

 

天然歯の歯根のまわりには、歯根膜という組織が存在します。通常はこの歯根膜によって歯と骨が強く結合しています。

 

今回は、歯根膜の機能が予想以上に生きてくれたことが、良い結果につながりました。

 

今後落ち着いていけば、歯の内部を洗浄する治療を行い、長期的に経過観察を行います。

異常な力が加わった場合、歯根膜が無くなり、歯と骨が完全に一体化することもあり、そうなると歯の破折のリスクが高まります。

しかし、今の時点で歯が欠損する事より、歯を残せた事の方がメリットが高いのではないかと思います。

 

生体の組織の強さを感じたケースでした。

 

山中歯科 山中大輔

 

カテゴリ:口腔外科

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