治療例(インプラント)
治療例:歯根破折後の欠損をインプラントで補綴治療
「歯の破折」「歯根破折」といった言葉をご存知でしょうか?
そのままの意味ですが、歯(歯根)が折れてしまう事です。実は「歯周病」「う蝕(虫歯」に次ぐ抜歯原因とされています。
継続的にメンテナンスをしている患者さんのうち、抜歯となった原因の約70%が歯根破折であった、という報告もあり、虫歯や歯周病予防のメンテナンスをしていても、歯根破折による抜歯は避けれない事が多いのが現状です。
下のレントゲンでは、後方に延長したブリッジ(レントゲンで白く見えるのが金属部分です)を装着しているのがわかります。
患者さんはこの状態で数年間メンテナンスを継続していましたが、ある時右下が腫れていることに気付き、精査してみると、金属コアが入っている真ん中の歯が折れてしまっていました。
垂直的に折れてしまった歯は保存困難であるため抜歯する必要があります。
そうすると、大臼歯と言われる奥歯が2本欠損してしまいます。
咀嚼するときに最も機能する第一大臼歯、咬合力の負担が一番大きな第二大臼歯、どちらの歯も口腔機能のためには重要な歯です。患者さんとよく話し合った結果、義歯(入れ歯)治療ではなく、インプラント治療を行う事になりました。
インプラント上部構造物(被せる部分)の製作方法は何種類かありますが、今回は咬合力の強い方でしたので、スクリュー固定(ねじ止め式)を採用しました。また清掃がしやすいように上部構造物の立ち上がりの部分は歯肉の上になるようにしました。
このようにすることで、何かトラブルがあった時に比較的簡単に対応する事が可能と考えられています。
インプラント治療前(抜歯後)
インプラント治療後
治療例:段階的GBR(骨誘導再生療法)法
インプラント関連の外科的手術のうち、GBR(Guided Bone Regeneration)というものがありますが、この方法は「インプラントを予定していた部位の骨量が不足しているため、インプラントの周囲の骨の量を増やす」ための手技になります。人工骨や他家骨、成長因子などの材料を使用して骨を誘導・再生させる治療法で、近年多くの優れた材料・術式の開発により、インプラント手術には欠かせない手技になってきました。
GBRの中でもインプラント埋入と同時に行うものと、インプラント埋入前に先立って行うものStaged Approach(段階的GBR)とがあります。インプラント周囲の骨がどれだけ残っているかによって選択していきます。
- 骨幅が細くインプラント埋入は困難
上の写真のケースでは、やはり骨幅がかなり狭く、前述の段階的GBR法を選択した患者さんになります。人工骨を使用して骨の量を増やしていきますが、ここまで大きなGBRの場合には「チタンメッシュ」という材料が大きな効果を発揮します。
- 人工骨を設置
- チタンメッシュを設置
下のCT画像は術後約3か月後の経過画像になります。チタンメッシュの形がはっきりとわかります。通常のレントゲンではここまでのイメージは出来ません。やはりインプラント関連の手術の術後経過を調べるためには3次元のイメージが有効だと考えています。
- 術後3か月のCT画像
下の写真ではGBRを施術した部分のCT画像です。
白く見えるのが骨を造成させた部分になります。赤く囲っている部分がもともとあった骨の部分、緑の線で覆ったところまで骨が成熟してきています。
- 骨造成部分
骨の成熟を待った後、インプラント体の埋入を行います。GBRを行うことで、インプラント体を埋入するための十分な骨幅を獲得できました。
- インプラント埋入
注意:比較的大きな範囲のGBRを行うと必ず術後の腫脹が生じます。また1週間ほど内出血に伴うアザが生じることがあります。
治療例:GBR(骨誘導再生療法)を併用したインプラント治療
下の写真は左下奥歯に装着していたブリッジの支台歯が悪くなり、抜歯に至った患者さんのケースです。歯の周りの骨が無くなってしまっているのがわかります。ここまで歯周病が進んでしまうと保存することは出来ず抜歯になってしまいます。
- 歯槽骨の吸収を伴う保存困難な歯
抜歯後の補綴処置としてインプラント治療を行うことになり、CTを用いてシミュレーションを行いました(下図)。抜歯した部分の歯槽骨はかなり大きく吸収してしまったため、インプラント1次手術と同時のGBR(骨誘導再生療法)を行う方法を選択しました。
- 抜歯後の口腔内
- CT画像上でのインプラントシミュレーション
粘膜を剥離してみるとやはり大きな欠損が認められます。そこにあらかじめ決めておいたサイズのインプラントを計画通りに埋入していきます。骨のない部分には人工骨を填入し、その上は吸収性の膜でカバーしていきます。この膜の存在により、上皮細胞が人工骨の中に入ってくるのを抑え、骨が成熟していくのに有利に働きます。
- 剥離時(大きな骨欠損を認める)
- 予定部位にインプラント体を埋入
- 骨欠損部位に人工骨を填入
インプラント体を埋入後、数ヶ月の治癒期間(この期間の間に人工骨部分が成熟し、インプラント表面と骨が生着していきます)を経て、上部構造物を製作しました。
- 数ヶ月の治癒期間中
下の写真は上部構造物(被せ物)を装着させた状態になります。
奥歯である事および深い部分にインプラント体が設置されている事を踏まえ、スクリューで装着するタイプの上部構造物を設計をしました。
半年から1年に一度、上部構造を外しプラークの付き具合をチェック・洗浄していきます。
治療例:サイナスリフト(歯槽頂アプローチ)
上顎の臼歯部(上の奥歯)に対してインプラント体の埋入を行う場合には、上顎洞(上顎骨の中にある空間・鼻の横にある)という「空間」が存在するために、骨の量が足りない場合があります。その部分にインプラント治療を行う場合には、様々な方法で骨量を増やす必要があります。
サイナスリフトと呼ばれる治療法のうち、歯槽頂アプローチという手法を紹介していきます。
下のレントゲン写真において、赤い○で囲われた歯は破折しているために排膿を繰り返していました。抜歯の必要性を説明し、歯の欠損部に対してはインプラント治療を行うことになりました。
傷口の治癒を待ち、CT撮影を行いインプラント治療の計画を立てる事に。
下のレントゲン写真で赤い線より上の部分が上顎洞という空間になります。抜歯した部分にインプラントを埋入しようとしても骨の高さが不足しているため、このままではインプラント体が上顎洞に飛び出てしまいます。
上顎洞の中にインプラント体が飛び出てしまうと、上顎洞に慢性的な炎症が生じるため、インプラント治療は成功しません。その為に、上顎洞拳上手術(Maxillary Sinus Lift)という外科的な手術が必要になります。
上顎洞と骨との間にある上顎洞粘膜を骨からはがしつつ、少しずつ持ち上げていく事で、上顎洞底を拳上します。また持ち上げた部分にできたスペースに人工骨などの材料を填塞していく方法になります。
上顎洞拳上手術(Maxillary Sinus Lift)には専用の器具が必要になります。様々なものが普及していますが、山中歯科では患者さんに負担が少なく安全性の高い「ハッチリーマ―エクスプレス」という器具を使用しています。
次の写真が術後のCT撮影像になります。上顎洞粘膜を拳上しながらインプラント体の周囲には人工的な骨を填塞していますので白く映っています。
術後の経過も良好であり、ハッチリーマーを応用することで比較的安全に手術を行うことが出来たと考えています。