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歯科治療の重要性

これからの歯科医療は「痛くなってから治療する」のではなく、「口腔内の病気をあらかじめ予防する」事が重要視されています。将来的に生じるお口のトラブルを未然に防ぐことによって生涯にわたって健康な状態を保てる事につながると考えています。

医療が発展し、世界的に見ても長寿とされている日本ですが、寿命が長くても「健康寿命」を長くしなければ、残された時間は「要介護」となり、現在の超高齢者社会における日本の状況はさらに悪化していくと懸念されています。

生涯にわたって「噛める」という状況が「健康長寿」を達成する一つの要因になると考えられてきていますが、歯科治療の重要性はまだまだ認知されていないのが現状です。

ここでは、ライフステージに沿って、注意しなければならない事や歯科医院での上手な治療の受け方を説明致します。

妊婦の方へ(産まれてくる子供のために)

妊婦の方

母親の持つ虫歯原因菌が多ければ多いほど、子どもの虫歯原因菌も多くなり、虫歯のリスクが高くなると言われています。

虫歯は細菌の感染によって生じます。産まれたての子供のお口の中には細菌はいませんが、母親や周りの大人達が虫歯に罹患した状態で、同じスプーンやお箸を使用すると、子供にも虫歯の原因菌が入りこんでしまいます。

練馬区歯科医師会では妊婦健診という事業を行っておりますので、妊娠されている方は無料で健診を受けることが可能です。まずは、産まれてくる前にしっかりとした治療を受けましょう。

また、虫歯だけでなく、妊婦の方が歯周病に罹患すると、「早産・低体重児出産」のリスクが高くなると考えられていますので、なるべく早い段階で歯科医院での健診や指導を受ける事が望ましいと考えています。

可能であれば、妊娠してからではなく、妊娠する前から口腔内の状態を改善していきましょう。

乳幼児期(0~4歳ごろ)

乳幼児期

乳歯列は2歳半ほどで生え揃いますが、この時期は自分で歯みがきできないために、親御さんによるブラッシングが重要になります。まずは、歯ブラシに慣れさせて歯ブラシが楽しいものだと覚えさせましょう。

また、乳歯列には歯と歯の間に隙間があり、その部分に虫歯が生じやすいため、仕上げ磨きの時には注意してあげましょう。

乳幼児期

練馬区では、1.5歳、2歳、3歳の時点で健診事業を行っており、その際に歯科健診もあります。普段疑問に思っていることや心配なことを聞いてみてください。

学童期・思春期(5~18歳ごろ)

幼年期と共に、学童期では虫歯を持つ子供は減少傾向にあります。保育園や幼稚園、小学校、中学校における歯科健診の確立や、親御さんの意識が高くなってきた結果だと思います。

しかし、顎骨の発達を見ると、顎が小さい子が多く、歯列不正(歯並び)や口呼吸の子が多いと言われています。

小さいうちからやわらかい物ばかりでなく、咀嚼力がつくように食事を工夫しましょう。

学童期・思春期

正常な鼻呼吸ではなく、口呼吸をする子は、口腔内が乾燥しやすく虫歯になりやすい、感染症にかかりやすい、歯列不正(出っ歯)になりやすい、と考えられています。
治療にはお口の体操(トレーニング)や矯正治療などが必要な場合があります。

心配な方はかかりつけの歯科医院に受診してみましょう。

また思春期には、無理なダイエット等はせず規則正しい生活と食事、口腔衛生が重要になります。この時期からしっかりと口腔内の健康状態に関心を持つように心がける必要があります。

青年期(18~39歳ごろ)

この年代になると、幼い時の歯みがきの習慣によって大きく差が生じてきます。親御さんの手を離れ、自分で色々な事が行えるようになってきた反面、お口の中のお手入れも雑になってしまう方も多くいらっしゃいます。

また、歯科医院に通院するのが面倒になってくる年代でもあります。学生さんであれば、学校の行事や部活動などで時間が取れない、社会人の方であればお仕事が忙しくて来院する時間が無い、といって、痛くなるまで放っておく方も少なくありません。

青年期

この年代のうちに、しっかりと定期的に歯科医院で検診する、クリーニングを含めた予防処置を行う、毎日の口腔ケアを習慣づけることで将来生じるトラブルの多くを回避できます。

逆に、この年代で「虫歯が多くある」「歯茎が腫れて出血する・口臭がする」「治療をしてこなかったので歯を喪失した」などの症状・自覚のある方は注意が必要です。そのまま放置していけば、壮年期・高年期になった時に多くの歯を喪失し、咀嚼能力が落ち、医療費もかかるうえに、健康状態が悪化していく可能性もあります。

しっかりと意識改革をして、歯科医院への通院をしていきましょう。

壮年期(40~64歳ごろ)

お仕事や家庭で円熟した時期にあると思いますが、身体機能などは徐々に低下してきています。 健康についての関心も高くなる半面、色々な不安に悩まされる年代でもあります。

多忙な時期は、不規則かつ偏った食事生活になりがちです。正しい情報を基に定期的な健診で、ご自身の健康状態をしっかり把握するようにしましょう。

壮年期

この年代で多く現れるのが「歯周病」です。虫歯とは異なり歯周病の症状ははっきりとしたものではありませんので、歯科医院での検査が必要になります。「歯がぐらつく」「歯肉から出血する」「口臭がきつい」などの症状が顕著な場合は歯周病が進行している可能性があります。

また、これまでに多くの歯を治療してきた方は、再度精密な検査をお勧めしています。

この時期に「以前治療した場所が悪くなってきた」「装着しているブリッジや義歯の具合が悪くなった」という患者さんは少なくありません。

比較的時間の余裕ができ、健康にも関心が深くなってきたこの時期に、お口の中全体の治療を行い、口腔環境を整えることが出来れば、高年期・老年期になった時にも、しっかり咀嚼し実りある生活を送れるようになります。

高年期・老年期(65歳~)

今まで以上に、時間的ゆとりができてきます。 同時に医療機関に受診する機会も増えてきますので、様々な病気を発症する年代でもあります。

お口の中と全身の病気には深い関わりがある事がわかっています。例えば、歯周病と糖尿病、歯周病と脳血管障害などが挙げられます。近年では、残存歯数が少ないほど認知症になりやすい事がわかってきました。

しかし、歯を失った後でもしっかりと噛める入れ歯を装着する、もしくはインプラント治療でしっかり噛める状態が作れれば、その後の認知症リスクが減らせると考えられています。

高年期・老年期

人生の終末期には必ず介護が必要な時期がきます。しかし、健康寿命を延ばすことでその時間を短くできるかもしれません。そのためには、しっかり咀嚼できる「噛みあわせ」が重要になってきます。

「オーラルフレイルとは?」

「オーラルフレイル」とは、「歯・口の機能の虚弱」のことを意味します。 歯の喪失や咀嚼筋力の減少によって、食生活が変化し(咬みやすいもの・食べやすい物を好むようになる)、良質なたんぱく質が摂取できなくなると、余計に筋肉量は減少していきます。その結果、生活機能障害に至ることが、東京大学高齢社会総合研究機構によって示されています。

歯・口の機能低下は、加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)や運動器症候群(ロコモティブシンドローム)の前兆とも言われ、オーラルフレイルの予防が全身の健康に寄与することもわかっています。(日本歯科医師会 啓蒙活動より)

「社会性」「バランスの良い食事と口腔の定期的管理」「運動」の3つの維持がサルコペニアの予防と健康長寿につながると考えられています。

歯科医院から出来る事は、「しっかり噛めるようにする事」「定期的に管理する事」だと考えています。きちんと咬みあう入れ歯やインプラント治療などの「補綴治療」が大事になってきます。

介護者の方・通院困難な方へ

脳血管障害や下肢骨折が原因で歩行困難になるケースは非常に多く認められます。

また、「認知症」と「骨粗鬆症」が合わさると骨折のリスクは跳ね上がります。

万が一、歩行困難や寝たきりの状態になったとしても、諦めてないでください。口腔内の衛生状態が悪ければ「誤嚥性肺炎」などの新たな疾患が生じます。

そのような方や介護を担当する方のために、「訪問歯科」というものがあります。

介護者の方・通院困難な方

今では、訪問医療を専門に開設する医院も存在しますし、歯科においても訪問歯科を行う歯科医院は増加しています。

当院においても、「通院が困難になった」と言われることもあり、お宅に訪問して治療する事もあります。

介護する方にとっても、普段の歯みがきや入れ歯の扱い方など、よくわからない事も多いと思いますので、お気軽にご相談下さい。

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