口腔外科
親知らずの抜歯(大人)について
食生活の変化などが原因でヒトの顎が小さくなるにつれ、一番奥の歯「親不知(親知らず)」の萌出するスペースが不足し、ななめに生えてくる人が大半を占めるようになりました。また、生まれたときから親知らずが存在しない(必要では無くなった)子も多く認めれれるようになってきました。
ななめに生えてきた親知らずの場合、「下の奥歯が腫れて痛む」「咬むと下の奥歯の歯ぐきが痛い」といった症状が生じてきます。 痛みの原因として、萌出してくる時に周囲の組織を押して痛む場合、また萌出し終わった後に親知らずの周りに細菌が入り込み、炎症を起こしてしまっている場合などがあります。
手前の歯が虫歯になっていなければ、対症療法によって痛みが引いてくることは多いのですが、忘れたころにまた痛くなることがあります。また、放置しておいた場合手前の歯の深いところに虫歯ができてしまい(歯ブラシはまったく届かないので)、手前の歯の治療が困難になるケースもめずらしくありません。
- 親知らずの手前にできた大きな虫歯
- 親知らずのCT画像
そのような場合には抜歯をすることをお勧めしますが、抜歯をする際に注意しなければいけない事がいくつかあります。
通常のパノラマレントゲン(お口全体のレントゲン)を見たときに、親知らずの先と下顎管(顎の中を伝っている比較的大きな神経管)が重なっていると、抜歯時に神経を傷つけてしまうことがあります。また親知らずが周囲の骨と癒着(くっついてしまう)している場合には抜歯自体が困難になることもあります。
そのため、パノラマレントゲン上で「はっきり見えないからもう少し詳しい情報が欲しい」と思った場合にはCT撮影が有効になります。
当院では、歯科用CTを導入していますので、抜歯時のリスクを事前に把握する事が可能です。
親知らずの抜歯(子供)について
通常、10才にならないぐらいの年齢になると、顎の骨の中で親知らずとなる歯の元(歯胚)が作られていきます。(写真の赤い丸で囲った中に歯の頭だけが映っています)
大人になるにつれ、歯も成長しますので、そのままにしておくと成人してから、手前の歯を押したり周囲の組織に影響を与え、痛みや腫れが生じる事がよくあります。
しかし、親知らずの問題は、大人だけのものではありません。
親知らずは顎の骨の成長にも影響を与えますので、反対咬合(下の顎が前に突出しているケース)などではさらに悪化させる原因にもなります。現状気にならない程度でも、うまく生えてこない親知らずの影響で歯列不正(歯の並びが凸凹)になる場合も多く認められます。そのような事態を防ぐために子供のうちに親知らずを抜歯することを「ジャームエクトミー」といいます。
当院では矯正治療のパートナーである矯正歯科からの依頼で、このような生えてくる前の親知らずの歯胚抜歯を行う事があります(年間約20症例)。子供とはいえ、外科的な処置になりますので、侵襲を最小限にするためのCT撮影診断や、注意事項を保護者の方にご説明した上で抜歯を行います。
歯胚抜歯は保険適応ではありませんので、自費診療となります。あらかじめご了承ください。
口腔外科手術について
一般歯科においても、ある程度の口腔外科手術は可能です(親知らずの抜歯やインプラント手術も口腔外科手術の一つと考えられます)。
当院では、通常の歯科で使用される麻酔で行える範囲の手術は施術可能です。
ただし、全身疾患(悪性腫瘍や骨粗鬆症)治療中であったり、服用中のお薬の種類によっては、医科への対診が必要な場合もあります。
また、粘膜疾患等病理組織検査が必要な場合、大学病院等への紹介をする事も可能ですので、心配な方は一度ご相談下さい。
治療例:骨隆起の削除
咬む力の強い人に認めれることが多い「骨隆起」というものがあります。顎の骨が外側に添加されていき、出っ張った突起のように形成されます。患者さんの中には悪性腫瘍と勘違いされる方もいらっしゃいますが、中身は骨なので症状が無ければ体に害はありません。しかし、薄い粘膜に覆われた骨なので、硬い食物や義歯の接触により粘膜が傷つきやすく、常に接触痛のある状態が続きます。義歯を使用している方にとっては苦痛の原因となることも少なくありません。
写真の患者さんでは、骨隆起が存在するためその部分を避けるように小さくした義歯を長年使用していました。安定した義歯を製作するため、上顎の正中に認められた骨隆起を除去しました。通常の麻酔を使用して行える口腔外科手術です。